やはりクリスマスis悪〜G・K・Chesterton『Christmas』の感想とノート
G・K・Chesterton『Christmas』(芥川龍之介編『Modern Essays』より)
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要約
クリスマスなどの祝祭を前もって祝うべきではない。祝祭の本質は、日常が非日常へと鮮やかに切り替わるところにあるからだ。現代人は儀式や伝統の精神性を無視しながら、形式だけを真似するが、これほど非論理的なことは無い。儀式は、その精神の下に厳格に行うか、或いは一切行わないかのどちらかであるべきである。伝統を忌避することは愚かだ。我々は、一貫しているべきなのだ。何事にも例外はあるが、例外はあくまで例外として顧みられる。
故に、クリスマスに七面鳥を食べることは賛同する。人間には決してわからない七面鳥の内心のために、確実に存在していると言える人間の喜びを犠牲にすべきではない。一方でまた、動物の生体解剖には反対する。生体解剖は、あるかわからない科学の発展のために、我々の善良な感情を損なうからだ。つまり、不確かな何かのために、人間の健康的な感情を損なうべきではない。こうして、過度な博愛主義が残酷な科学主義に一致するように、狂気的な両端が、実は同一の思想であることは珍しくない。
七面鳥という生命の、内心も、そこにいる意味も、運命も、何もかもを、我々は知ることが出来ない。
感想
芥川龍之介が海軍学校で英語教師をしていた時に、多読家であった自身の経験を活かし、当時最新かつ必読の作品を教材として自ら選定した『Modern English Literature』シリーズ。今なら国立図書館で電子化されているので、直ぐに読めます。誤植は多い、難単語等に補足がついてる訳でもないと言った調子なので、英語学習に向いていると言うより、芥川龍之介のファン向けと言った感じです。芥川の講義は非常に高踏的で、テキストを音読しては大量の意訳を交えて即座に訳すというのを繰り返し、「単語の意味や逐語訳は君たちが勝手に家でやればよい」なんて言っていたらしいですが、まさにそんな感じの空気が漂っています。
英文自体も当然100年以上前のものばかりですが、ほとんど現代のものと変わらない印象です。所々格調高い表現や、今では差別用語となっている単語など出てきますが、少なくとも日本語のように字体が丸ごと違うなどの大きな変化は無い。ただ僕が英弱なので読みにくいだけですね。
スタンスや文体は『侏儒の言葉』に近いですかね。一見すると逆説的な内容を、豊かな例とともに、微笑を浮かべて皮肉交じりに語るというスタイル。顎に手を置くあの写真の存在も相まって、多分世間一般の人がイメージする「芥川龍之介」像に近いと思います。実際には、もっと感傷的で苦悩と人間臭さに満ちている人なのですが。雑誌の編集者に文句を言うのもどこかで見た気がします。…ああ思い出した、『饒舌』ですね。
一方で、話題提供→主張→例→説明→主張のような高校時代に死ぬほど見た形ではあるので、やはり英語圏は形式的な書き方するんだなあと思いました。こういうところは日本語の方が好みですね。主語や目的語をあえて言わなかったり、レトリックを巧みに織りまぜて論理の弱い主張でも空気感で押し通したり、言葉の選択ひとつで独特の雰囲気を出したり……日本語の方が自由度が高い気がします。本文だって、文体ひとつでアフォリズムにも、論文にも、詩にもできそうです。
内容については……ちょっと無理筋かなあなんて。人間の健康的な精神性とは、一体なんなんでしょうか。例えば、生体解剖によって新たな知見を得ることによる、知的な喜び。これは確実に存在していると思いますが、これに対して賛成するのか反対するのか。つまり、この喜びは善良なのでしょうか?
前半の内容だけなら、わかります。本末転倒。でも、例えば目の前の相手に礼儀を表したいという感情と、快適な服を着たいという感情が共に実際にあって、少しカジュアルなスーツを着ることは「非論理的」にあたるのか?そもそも、存在するか分からない「相手の不快感」のために、確実に存在する自身の快適性を犠牲にすることはどうなんだ?なんて考え始めると、そこまで筋が通ってるようには思えません。
例外について言及しているのは上手いですね。それは極端な例外だから、僕の論理の埒外だよと言われてしまえばそれまでですから。
思うに、多分「蓋然性」なんだろうなと思います。自分の感情や考えはまず100%存在している(デカルト的ですが)。そうすると、恐らく同じ人間であるこいつにも喜びや悲しみが80%くらい存在しているはず。でも、この犬は同じ哺乳瓶だけど同じような喜びがあるかは微妙、50%。虫やウィルスなどに至っては、もう同じような喜びを感じるとは思えない、10%。のように。こうしたときに、パーセントの高い方を優先しようねという主張と理解しました。
でも、これで行き着く先はエゴイスティックな世界でしかありませんよね。自分が人を殺すことに喜びを覚えるなら、存在するか分からない人の「悲しみや失意」などは無視して良いという話になってしまう。だから、無理筋。
さらに言えば、「健康な感情」なんてものは、差別に繋がりかねない。人を食べることで弔う文化がある民族は、西洋人(現代人)から見たら「不健康」でしょう。でも、それは確かに存在しているから。
多分、「一貫した論理を持つべきである」というところが自分の中で引っかかっているような気がします。ロゴス中心主義。多分人間社会はそこまで01ではない。人間自体も非理論的な「感情」に支配されていますし、それが寄り集まった社会ともなれば、もっと複雑で人間の理性では判断つかないような、豊かなカオス構造がそこにはある。多体系となることである種の秩序が創発すること(部分)はありますが、それ以上に複雑になること(部分)もありうる。
そういうものへの敬意と謙虚さを持つべきかなと思います。
おいページ数が足んねぇぞ〜古市憲寿『正義の味方が苦手です』の感想・ノート〜
古市憲寿『正義の味方が苦手です』
目次
はじめに
第一章 緊急事態下の脱力法
ヒトは神頼みをやめられない/ファクトは感情に勝てない/日本に呪文使いがいないことを喜ぶ/人間の時代はしばらく終わらない/流行るとはバカにされること/自分が「古く」なることを想像してみる/若者は常に嫉妬される/会ってつまらない人はヒットを生み出せない/「国民」という言葉は要注意/緊急事態には賞味期限がある/問題は「誰と共に生きるか」だ/小倉さんの未来に思いを馳せる/伝統を守る人が文化を破壊する/「地球を守ろう」は嘘まみれ/呑気なのは悪いことだろうか/「10年後」から振り返ってみる視点を持つ
第二章 そんなに頭に血をのぼらせてどうするの
日本は「快適な自由」の設計に失敗してきた/制約はときに創造の母となる/高いところに登りたがるのは誰か/行き過ぎた正義感はパロディの敵である/まずは冷静になって/プロは「バカ」でいい/真の「ミニマリスト」はどこにいる/ユートピア願望は危険性を孕んでいる/一人旅は寂しくない/暴走する正義感が行きつく先は/AIは人間を献身的に働かせる/失言よりも糾弾すべきことがあるはず/「未来人の人権」は守らなくていいのか
第三章 余所者には余所者の幸せがある
中吊り広告は不滅です/嫌な経験こそ記憶にとどめる/「あだ名」は意外と恐ろしい/「専門家」の「政治家」化に注意しよう/書店には生き延びて欲しい/有識者はなぜ頼りにならなかったのか/隈研吾さんは格好よかった/キャンセルカルチャーは危ない/文化は模倣によって発展し、洗練される/松本市長の「覚悟」を讃える/不幸の意味を探し過ぎていないか/大切なのは自分にとっての幸せを理解すること/冬が危ないのは今に始まったことではない/「隠れた人事権」を持つのは誰か/その「フェイク」には価値がある/不安が社会の統制を強化する/余所者だと思って生きていく
第四章 戦争が起き、元総理が殺された
「正義」はいつも都合よく利用される/「素人」は沈黙せざるを得ないのか/優れた物語は国家よりも寿命が長い/こんな簡単に成仏ができるなんて!/SNS時代の戦争は「ゲーム」に見えない/これからも「平和ボケ」を享受できるか/宇宙人襲来で人類は団結できるか/人は立場から自由にはなれない/個人で大きな仕事はできない/「リアル」はどこにあるのか/ソフトパワーは侮れない/「みんなで良いことをする」に怪しさを感じてしまう/小手先の「やった感」が好きな人が多い/苦手な人とはとにかく距離を置く/世界は77年で一回りする/「倍速視聴」は映画への冒涜か/若者はいつだって補導されている/注意散漫でも構わない/安倍さんにはもっとこの世界にいて欲しかった
おわりに
要約
正義と狂気は表裏一体である。認知能力に優れている人ほど、情報を都合よく組みかえて、理想的な物語を作りあげてしまう。誰しも立場や、自分の持つ「歪み」からは逃れられない。大切なのは、お互いが「歪んでいる」と理解しながら、相互理解を図ること。また、偏見や予断をすぐに取り下げる「揺らぐ力」を持っていることだ。
歪みを許さない社会は恐ろしい。
だから、世界を色々な視点で切り取って見てみよう。
感想
この本を読んでいる途中、常に頭にこの言葉がありました。
もともと自分のいだく基本的思想にのみ真理と生命が宿る。我々が真の意味で十分に理解するのも自分の思想だけだからである。書物から読み取った他人の思想は、他人の食べ残し、他人の脱ぎ捨てた古着にすぎない。
(ショウペンハウエル『思索・読書について』より)
この本、はっきり言って僕には合わなかったです…
というのも、本書の各題材がとにかく世論(マジョリティとされている論理)への逆張りにしか見えなかったというのが大きいです。
これは多分作者がよろしくないと言うより、限られた紙面での連載で、あんまし踏み込んだ話ができない。加えて、即時性の強い雑誌という媒体で掲載する以上、時事的な問題を扱うことになり、そこである程度「載せる価値ある」内容にするなら世論に逆らうようなことを書かねばならないので当然だと理解しています。
あとは連載というものは、気に入らなければ次から読まなきゃいいじゃんという感じなんでしょう。それ故に、万人受けする文体や内容ではなく、個人の嗜好や人間性が強く反映されたものが掲載されやすい。連載が続く事に、ファンが読むものになっていく。だから、一冊を通して何かを語る新書と思うとちょっとお門違い。
幾つかの題材で光るものはあったのですが、もう少し深いところまで踏み込んで欲しかったです…… 差し込まれる参考文献の多さからも、かなり博識で実際はもっと有機的な考えであったり、還元主義的な「社会学者らしい」分析もできるとは思うのですが、無念。
とにかく本書だけでは、他人の本の賢そうな一説を引用し(振り回され)て、逆張りして、最後にうまいこと言っているようにしか見えなかったのが残念。まあこれは自戒でもありますが。何となく星新一を彷彿とさせる本でした。あれも短編で、全体的に一発ネタ的で、一冊の中での差が激しい。
更に自戒をするなら、各題材は思索の「種」として捉えるのがいいのかなと思いました。Aが一般的だが、非Aという考えも一理ある。さあこのアンビバレントをどうする?という風に出発点と捉えるという。そういう読み方が出来れば、50以上の豊かな思索が自己のうちに堆積して、非常に効果的だったと思うのですが…… 如何せん自分にそこまでの体力がなかった+旬を逃して腐乱臭を醸しつつある時事問題(食べ残し)を調理する気にならなかったですね……
とにかく惜しいなという感じです。もう少しボリュームがあれば……
ところで、僕の最も好きな本(にして未だにキチンと読み切れていない)のひとつに、中村雄二郎の『述語集』というのがあるのですが、これも40のテクニカルタームを少しずつ、しかも色々な本を引用しながら纏めあげていく形式なんですよね。
では本書と何が違うのかと言うと、『述語集』の方は一見バラバラにみえるが、実は終始一貫して「現代(哲学)におけるロゴス中心主義からの脱却」というテーマが走っている。その構成の妙が読んでいて衝撃的でした。本書も「正義とみなされる既存の意見を批判する」という通底したテーマこそあるのですが、ちょっと合わなかったですね……
個人的な好みとして、もう少し「超然」として欲しいと思いました。これは感覚なんで批評にもなっていませんが……社会の露悪をそのまんま糾弾、提示されると息苦しい。それに対して皮肉交じりに語るのも渋い。
芥川龍之介は軍国主義を批判しましたが、そのやり方は「桃太郎」という皆がよく知る童話を少し書き換えてメタファーとして語った。芸術至上主義とも言われる、一瞬の美しさのようなものを描写しました。
暗澹たる現実を提示されるだけなのは、なんとも苦しい。難しくてもいいけれど、眉間に皺を寄せて読む本よりは、読んでいて感嘆の溜息が漏れるような美しさがあってほしい。……まあ、これは完全に個人の感想ですので。
好きだった(自分の思想に近かった、考えさせられた)のは、
- ヒトは神頼みをやめられない
- 会ってつまらない人はヒットを生み出せない
- 優れた物語は国家よりも寿命が長い
- 安倍さんにはもっとこの世界にいて欲しかった
この辺でした。

いいからシンキング(思索)だ!
誰が歴史を「語る」のか〜石黒拡親『2時間でおさらいできる日本史』 の感想とノート〜
石黒拡親『2時間でおさらいできる日本史』
目次
第1章 旧石器時代~弥生時代/ 第2章 大和・飛鳥時代/ 第3章 奈良時代/ 第4章 平安時代/ 第5章 鎌倉時代/ 第6章 南北朝~宝町時代/ 第7章 戦国・安土桃山時代/ 第8章 江戸時代/ 第9章 明治時代/ 第10章 大正時代~昭和戦前/ 第11章 昭和戦後~平成時代
要約
見知らぬ用語ばかりで本質が見えない教科書はつまらない。また、人は使わない言葉をどんどん忘却してしまう。旧石器時代から平成時代までを、枝葉末節を削り落として、「人間の営み」という点から、太い歴史の流れを2時間で「わしづかむ」。
感想
中学で日本史を最後に学んでから六年、その間新撰組をテーマにした映画を見たり、戦国舞台のゲームをやったり、壇ノ浦の戦いを元にした小説を書いたり、東照宮や瑞鳳殿をみたりと、日本の歴史的モノに触れる機会こそ何度かあったものの、当の日本史に関しては全くのノータッチで、個々の単語を断片的に知っているだけ……といった状況でした。前々から学び直しはしたいと思っていつつ、世界史に浮気していたのですが、古本屋で日本史に関する興味深い或る本を見つけたのをきっかけに、その前準備としてこの本をサッと読んで日本史をザックリ理解しようと思い、手に取りました。
まず何より、面白い!もはや断片的知識しか残っていない……というより、よく考えれば中学時代も単語を暗記するばかりで歴史の流れみたいなものを全く考えたことがなかった記憶があるのですが、とにかく知ってる単語が結びつくとなんとも面白いですね。
藤原道長めちゃくちゃスゲーやんそりゃ歌も詠むわとか、北条政子TUEEEEとか、明治初期意外と血なまぐさいなとか、応仁の乱…そういう…戦いだったのか……とか。オモシり……オモシり……
なんか人間ってブリコラージュ的というか、とりあえずどんな知識も覚えておいて、それが長い時間を経て必要になったとき、頻度は低いが生存に有利な知識であったということで、莫大な喜びが回路を焼き着けながら思い出すという性質があるのだと思います。オマージュとかパロディもその回路を上手く使っている。少なくとも僕はそういう感じです。
さて、本書特有の内容に入っていくと、もう少しここは加筆してくれ……ここの記述いる?の連続で、なかなかに歯痒い感覚でした。特に大正期や聖徳太子絡みとかは加筆して…という感じで、勘合貿易とか細かな政治闘争とかは削ってくれ…と思ったのを覚えています。特に後半(戦後)は細かな政治の動きが多くて複雑!
何故なんだろうかと考えると、これは割とアタリマエで、僕と著者の間で「歴史とは何か?」や「歴史に求めるものは何か?」、「我々が重要視するものは何か」が違うからなんですよね。
日本史という言葉はかなり広くて、文字通り日本の歴史。膨大なソレを本一冊(本書風に言うと二時間分!)に纏めるとなると、当然どうしても取捨選択が求められます。そこでどこを削って、どこを残すかが「何を日本史とするか」観に委ねられる。本という形で纏め直すなら、「歴史を学んで何を得るか」というのにもなり、それは結局「我々が何を重要視するか」という問題に帰結する。
例えば、お茶大好き御茶沢さんなら、2時間で日本史を語れといった場合、お茶が生まれ、広がり、茶道として政治的に影響力を持ち、千利休という男がいて……なんて話を1時間半はしているはずです。
だから、漠然と歴史を語るというとき、その行為は、人生で最も重要だと思うところを語るに等しいのだと思います。
歴史を編むとは、全身的行為。
これが「高校日本史」などと言った場合、こういう問題は先送りされる。纏めるべき歴史は、「試験に出る内容」だけに限定されるから。(勿論、何を試験に出すべきか、教科書に載せるべきかという議論は残りますが。実際そういう問題が「進化論を教科書に乗せるなら、神がデザインした説も載せろ」議論なんでしょう。)
でもこの本は単なる「日本史」。
では、この本の語る「日本史」は何か。多分それは「政治と経済」です。都が平安京だったのが平安時代……と、日本の時代区分が、政治機能の中心が何処(誰)かによって分けられていることもあって、かなり妥当だと思います。だからその分、文化的なところなんかはかなり削られています。
一方僕が求める「日本史」は何か…… これは難しい問題ですが、暫定的な答えを考えてみると、「他の作品をより楽しむ為の知識」であってほしいなと思っています。本能寺の変を知らない人は、信長をテーマにした作品を100パーセント楽しむことは出来ない。僕は聖徳太子が好きだから、聖徳太子蘇我入鹿説なんかは取り上げて欲しいし、芥川龍之介が好きだから、大正期は文学や市民生活をフィーチャーして欲しい。
ただ、これを先回りして学ぶのは難しいんだろうなと思います。だから、この本は土台、スケッチとして頭の中に置いておいて、あとから細かな陰影を書き込むようなスタイルを取りたいと考えています。
その方がきっと、「回路」が繋がったときに楽しいので。

合コンマスターへの道〜北村文 阿部真大『合コンの社会学』の感想とノート
北村文 阿部真大『合コンの社会学』
目次
第1章 出逢いはもはや突然ではない-合コンの社会学・序
第2章 運命を演出するために-相互行為儀礼としての合コン
第3章 運命の出逢いは訪れない-合コンの矛盾
第4章 運命の相手を射止めるために-女の戦術、男の戦略
第5章 運命の出逢いを弄ぶ-自己目的化する遊び
第6章 それでも運命は訪れる-合コン時代の恋愛と結婚
第7章 偶然でなくても、突然でなくても-合コンの社会学・結び
補論 合コン世代の仕事と恋愛-自由と安定のはざまで
要約
合コンは、「運命的出会い」というストーリーを人為的に発生させる装置である。マクロ的に見れば、合コンは婚姻に繋がるという期待から、社会的に確立した地位を持っている。結婚が愛であるという考えは、国家にとって都合の良いイデオロギーに過ぎない。
合コンの参加者同士は統一した「運命的出会い」という目的のため協力し、他の参加者を出し抜いて良いパートナーを得るという目的のため対立する。参加者は、「運命的出会い」を実現(しうる)と思わせるため、複雑で不自然な社会的コードの中でコミュニケーションすることが要求される。「運命的出会い」は限りなくメタ的な目的であり、特有のジェンダー感や、コードに基づいて「キャラ」を作るなど、欺瞞に満ちている。例えば、合コンは、「運命」を演出するために身分や年収といった社会的地位をあたかも無視しているかのように振る舞う。しかし実際には、参加者の年収をあえてバラけさせるなど、階層性を極度に意識した管理で実現している。(結局、参加者の属性には自ずと特定の階層性が現れてしまう。)
このような事情から、合コンの外に真の運命を見出す者や、合コンをゲームとして楽しむ者が現れるなど、合コン文化は成熟を見せている。
現代人は、不安定化する社会に伴って、「安定した職」や、「自分らしい生き方」、「真の愛」、「運命的出会い」等の確固たる「芯」を求めている。我々に要求されるのは、合コンなどの現代の様々な文化を、社会学的に異なる視点から見つめ直し、生涯通して「自分の物語」を編むことである。
感想
前に読んだ『「婚活」時代』と合わせて、現代の恋愛市場なんかの世代論(と暗澹たる自身の予後)を知れたら良いなと思い、同じタイミングで買った本です。
内容も共通する部分が多いので、比較しながら見ていくと、まず形式的なところでコチラの方がかなり「本格派」です。向こうがデータから状況を整理しつつ、その中で僕らはどう立ち回れば良いかを伝えるような、ある種プラグマティズム(とりあえず使えればいいや精神)的な所があるのに対して、こちらは「合コン」という構造を考察、分析し、「合コン」に対して新しい視座を与えることのみを目的としている。しかも、合コンで勝つには!みたいなことには一切触れていないし、社会的な問題提起や我々の行動への強い「べき論」を含んでいる訳でもない。
個人的には、こういう「方程式や基本法則はこうなっていました。工業に活かすとか、これをどう解くかとか、後は好きにしてください」みたいな、単純に知的好奇心、知る喜びのみで動く姿勢は、「伝統的物理学者」の態度であって、「アカデミアの外から見た学者」らしく見えるなあと言った感じがしますね。分野外だから見えにくいだけで、実際は社会貢献や応用みたいなことも気にしているとは思うのですが。
閑話休題。あとは、この本の方が、「ハレ、ケ」、「コード」、「スティグマ」、「スケープゴート」等のジャーゴンなんかがかなり多いです。「合コン」という、一見「ナンパ」な題材に反してこういう硬めなスタイルだったので、予想外で楽しめました。このスタイルの理由として、あとがきに、「社会学とは何かを知ってもらえることも目的とした」と正しく書いてあって、膝を打ちました。僕は異常者なので、小難しく話してもらえるほど楽しく思ってしまいます。自分が話す時は気をつけたいと思っているのですが……
内容的には、『「婚活」時代』の感想にも書いた、豊かさ(前時代的、お見合い、結婚、全体主義、理屈の部分)と正しさ(近代的、自由恋愛、個人主義、感情の部分)の、中間領域にあるのが「合コン」だと理解しました。だから、その両立のために様々な矛盾や欺瞞が存在する。僕は、ロゴス中心主義と、それに付随する資本主義が産んだ悪によって現代社会は苦しいと思っているので、ちょっとグロテスクに見えてしまいますね。もっと言うと、(合コンに限らず、恋愛なんかに関する多くの物事は、)決して思い通りにならない「感情」を理屈の上で満足させようとする営みだから、それは苦しいし、合コンから抜け出そうとする人も出るよなあという気持ちです。
全体の流れとは少し外れるのですが、本書中の複雑なコード論や、合コンの矛盾した目的などを読んで、もっと一般の会話やコミュニケーションの分析について興味が湧きました。僕は初対面の人(特に関係を構築しておかなくては後々困ることが確定してる人)との会話で行われる、自身の立ち位置を確定させようとお互いに探り合う感じとか、「初対面だから踏み込みすぎず」にいる一方で「友情を築く為に踏み込んだ話をしなくては」みたいな矛盾した目的に板挟みになる感じとかが漠然と嫌いだったのですが、それを思い出しました。あのお馴染みUさんも、初対面の時はめちゃくちゃ苦手な人だと思ってましたからね(告白)。
「自分の物語を編む」という視点や、現代人は「安定を求める」という概念は、他の概念にも流用が効きそうですね。イマイチまだパッとは浮かびませんが、他の本を読んだ時に思い出せたら良いなと思います。
最後に、現代ではあんまし「合コン」することは無くなってきたような気がします。というより、出会いの場としての合コンの立場は、マッチングアプリに取って代わりつつあるような印象を受けますね。ただ、マッチングアプリはかなり人為的で、「出会うために登録する」という過程があるので、本書にあるような「運命的出会い」の体裁は期待できない。マッチングアプリに抵抗感がある人と、無い人の差はそこなのかなと考えたりもしました。多分高々100年程度では僕らの「ロマンチック・ラブ願望」は消えないと思うので、マッチングアプリの影で合コンは生き残るんじゃないかなと思います。
この本を読んで合コンマスターになったので、合コンのお誘いお待ちしております!
東北大物理学科 素粒子原子核理論 面接の感想
先日、東北大学物理学科 素粒子原子核理論の面接を受けた気がするので、感想をいつものダイアリーよろしく面白おかしく嘘八百誇張100倍妄想爆発で書いた記事です。
特に深い理由があるわけではないですが、パスワード機能を使ったら面白いんじゃね?と思ったので、そうします。
面接の問題を書いたとかではないです。
パスワードは僕の名前をローマ字入力するときの動きです。わからなかったら掲示板かなんかで聞いてください。
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...ほんとに「緊張した~」しか書いてませんよ?