チベスナダイアリー

誰もまだ此れ程の阿呆の日常をありのままに書いたものはない。

再考・相対性原理(『場の古典論 1章』を元に)

ひも理論の勉強のついでに、相対論の理論的構築法を再考したいなと思い、名著と名高い場の古典論の3章くらいまでを読んでみます。ほぼメモ帳です。

第1章 相対性原理

§1相互作用の伝播速度

物理現象の記述のためには、時間と空間からなる「基準系」が必要です。あの辺、この辺、この間では困るのですね。明確に座標を定めなくては行けません。とくに、他から相互作用を受けない物体が等速直線運動を行うような系を「慣性系」と呼びます。

慣性系に対して等速で動く別の系も慣性系なので、慣性系は無数に存在します。

ここで、物理現象はあらゆる慣性系で同一であるという、「相対性原理」を導入します。つまり、方程式は慣性系のとり方によりません。(テンソル方程式の偉さはここから来てます。)特殊相対論は慣性系しか扱えません。電車の中みたいに速度が変わる(何もなくとも力を感じる)系はどうしようも無いのですね。こういう系は一般相対論で扱えるようになります。

もうひとつの原理として、相互作用(物体間のやり取り)の伝播速度には何らかの上限値cがあるというものを導入します。このcは実は光速と同じ(電磁波の波動方程式で速度部分に登場する)なので、これを「光速度不変の原理」と呼んだりします。

光速不変の原理から物体の速度は光速を越えられないことも分かります。光速を越える物体があったらそれを使えばやり取りを光速より早くできますからね。

2つの原理から、光の速度はどの慣性系から見ても同一で、測定値によるとおよそ3.0×10^8m/sらしいです。つまり、光を1.5×10^8m/sで追いかけても3.0×10^8m/sで逃げていくわけです。また逆に光と逆方向に2.9×10^8m/sで進んでも光は変わらず3.0×10^8m/sで自分の後ろへ進んでるように見えるわけですね。

このふたつを原理に置く理論を特殊相対論と呼んだりします。ニュートン力学では相互作用の伝播速度cをほとんど無限大として扱うので、相対論でc→∞の極限を取ればニュートン力学を再現することが期待されます。実際、この後に登場する色々な式はこの変形でニュートン力学的式に一致します。あとこの議論からもわかるように、相対論が効いてくるのはめちゃくちゃ速い現象を扱う時です。

ニュートン力学では時間は絶対的(全慣性系で同一)なのに対して相対論では時間は相対的(慣性系によって異なる)です。つまり、人によって付けてる腕時計の進み方が違うわけですね。なお、空間はニュートン力学でも相対的(ある慣性系では同一点で起きた事象が、別の慣性系では異なる点で起こることがある)です。同じ点で2回爆発が起こる時、等速運動する系では1回目は自分の前で爆発し、2回目は自分の後ろで爆発してるように見えることがあるでしょう。

時間の相対性は、次のような例を考えればすぐ分かります。例えば、ある観測者から見て止まっている点Aと点Bの中点Mから光を放出すると、その観測者にとっては光の到達はAとBで同時です。一方で、BからAの方向に等速で動く観測者から見ると、Bは光と同じ方向に(光から逃げていくように)動き、Aは光と逆方向に(光に向かっていくように)動いているように見えます。光の速さは定数なので、明らかにAに光が当たるほうが早いです。つまり、慣性系によって事象が同時かどうか異なってしまうことがあります。これは同時性の破れというのを表しています。

 

§2世界間隔

今後の議論のために、時間1次元+空間3次元からなる4次元空間を考えます。この空間上で、「事象」は「世界点」と呼ばれる点であり、どの位置どの時刻で起こったかによって記述されます。

粒子の運動はこの空間では曲線で表され、これを「世界線」と呼びます。

さて、無限に近い2つの事象間の「距離」の2乗を次の微小世界間隔により定義します。

ds^2=c^2dt^2-dx^2-dy^2-dz^2

微小世界間隔はこれにルートを取ったもので

ds=\sqrt{c^2dt^2-dx^2-dy^2-dz^2}

これは距離のようなものですが、空間の項の符号がマイナスなので三平方の定理っぽくないです。そのような数学を考えようという訳ですね。任意の2つの点の世界間隔は、これの積分で得られます。光によって関係付けられた(光の受信と送信など)2つの事象の世界間隔はどの慣性系においても明らか0です。

ds=0ならばds'=0と、dsとds'の次数から、dsとds'は比例することがわかります。比例定数aは時空間の一様性と空間の等方性から相対速度の大きさのみに依存します。全微分の変換とか使えばわかります。

3つの基準系とその相対速度、変換の比例係数を考えると、aが単なる定数1であることがわかります。(この辺の議論怪しいですね。ちょっと考え直します。)

よって、光速度不変の原理は世界間隔の不変性と言えます。

世界間隔が実のとき、ふたつの事象は同一位置で起こるような座標をとることが可能です。(とるべき慣性系が光速を超えないのと同じです。)これは「時間的」と呼ばれます。

世界間隔が虚数の時、ふたつの事象が同一時刻で起こるような座標をとることが可能です。これは「空間的」と呼ばれます。

「時間的」な事象は同一時刻で起こるような座標は取れず、従ってそれらの事象は明確な前後関係を持ちます。一方、「空間的」事象達は同一空間で起こるような座標は取れませんが、時間的な前後関係は明確には決まりません。どっちが先に起きても良いわけです。つまり、「空間的」な事象同士は因果関係を持つことが許されません。(どっちが原因でどっちが結果かが変わっちゃうから。)

あと原点から放射される光の世界線の作る面

x^2+y^2+z^2-c^2t^2=0

を光円錐とか呼んだりします。ひも理論で大事っぽいです。

 

§3固有時間

どんな運動をしていても、瞬間瞬間では等速と見なせるので、物体に結びついた時計(物体の静止系での時間)を参考にすることが出来ます。これを固有時間と言います。

静止系では物体の変位は0なので固有時間 dt'

-c^2dt'=ds^2

です。

世界間隔の不変性から、動く物体の固有時間の微小変化dt'を静止系で表すと

dt'=\frac{ds}{c}=dt\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}

となります。

これから、動いているものの固有時間間隔は止まっている人の時間間隔よりも短いことが分かります。つまり、動いている時計は止まっている時計よりゆっくり進みます。

これより、あるふたつの世界点を結ぶ世界線上の積分 \int dsは、真っ直ぐな世界線のとき(止まっているとき)最大値をとることがわかります。

 

§4ローレンツ変換

異なる慣性系の座標間の変換則を考えます。ニュートン力学ではガリレイ変換にあたるやつです。

さて、求めるような変換は世界間隔(距離のようなやつ)を不変にするものです。ここで、数学的にそのような変換は回転と平行移動しかないことが示されます。このうち、平行移動は座標原点(時間原点)をずらすだけなのでまあ考えなくていいとすると、考えるべきは回転変換になります。

さて、4次元空間の回転はxy,yz,zt,tx,yt,xz面内の6種類の回転の合成で与えられます。はじめK系とK'系の軸が一致しており、K'系がK系に対し、x軸方向に速度vで移動している時、明らかに変換を受けるべきはxとtなので、xt面内の回転のみ考えます。

やや天下りですが、このような回転は双曲線関数で与えられます。そうすると上手くいくらしい。特にK'系の原点の移動を考えるとふたつの系の相対速度vが出てきて、変換の式

x=\frac{x'+vt'}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}

c=\frac{t'+\frac{v}{c^2}x'}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}

を得ることが出来ます。これをローレンツ変換と呼びます。ローレンツ変換はc→∞の極限で確かにガリレイ変換に一致します。また、v>cのとき座標が虚数になってしまい、光速を超える物体がないということが確かめられます。

ローレンツ変換から得られる驚くべき結果として、ローレンツ収縮と時間の遅れがあります。動いている物体の長さは静止系で測った長さに比べ\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}倍に縮み、同一空間で起こるふたつの事象の時間間隔は、動いている系からみると\frac{1}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}倍に伸びます。

これを用いた色んなパラドックス(問題)が出題されますが、大抵「離れたとこにある同時性は調べられない」でカタがつく気がします。

また、ガリレイ変換では変換を2回行うとき、順序によって結果は変わりませんでしたが、ローレンツ変換では順序によって結果が変わります。これは、ローレンツ変換が回転であることを考えると理解できます。(異なる軸周りの回転は順序に依存しますよね。)

 

§5速度の変換

微小変位のローレンツ変換から、速度の変換もおこなえます。ローレンツ変換の式から\frac{dx'}{dt'}を考えればいいだけです。

すると、ある系から見て速度Vで動く系から見た速度vの物体の速度、すなわち、相対論的な速度の合成則

v=\frac{v'+V}{1+v'\frac{V}{c'^2}}

が得られます。これはc→∞でニュートン力学的な合成則になっています。また、光速より小さな速度の和はこれまた光速より小さいです。

また、ローレンツ変換で速度の向きがどう変換されるかも求めることが出来ます。特に、ローレンツ変換で光の角度がどう変化するかは応用上大切です。光行差とか言ったりします。

 

§6四元ベクトル

四元ベクトルの時間成分を第0成分、空間成分を第1~3成分とします。空間成分については、

A^i=(A^0,{\bf A})

と太字で書くことがあります。

ローレンツ変換によって座標と同じように変換を受ける(ローレンツ変換行列がかかる)量を反変四元ベクトルといい、A^iのように上付きの添字で表します。また任意の反変四元ベクトルに対し、空間成分を-1倍した共変四元ベクトル(変換に対してローレンツ変換逆行列がかかる)を定義できるものとします。これはA_iのように、下付き添字で表します。

ここでアインシュタインの縮約規則を導入します。これは1つの項の中に同じ上付きと下付き添字があった時、それについて和を取るというものです。

つまり、A^iB_i=A^0B_0+A^1B_1+A^2B_2+A^3B_3

です。

この例でいうiのように、縮約を取られている添字をダミー添字とか言ったりします。ダミー添字は自由に文字を変えてもいいです。

一般に座標変換の際に、ローレンツ変換行列がN個ローレンツ変換逆行列がM個かけられる量は、N個の上付き添字とM個の下付き添字によって表現され、N階反変M階共変テンソルと呼ばれます。特に、N=M=0のときはスカラーとも呼ばれます。スカラーローレンツ不変量です。

ダミー添字はこの中に含めません。つまり先程のA^iB_iの例では一見1階反変1階共変テンソルに見えますが、変換の際に行列と逆行列で潰し合うのでこれはスカラーと考えていいわけです。

添字の上げ下げは空間成分を-1倍することで行えますが、これは計量テンソルを用いて表現されます。計量テンソルは座標によりません。

また、四元ベクトルと縮約をとってもそのベクトルの形を変えないようなテンソルを単位テンソルと呼びます。単位テンソルは座標によらず、単位テンソルの添字を上げ下げした物が計量テンソルです。

完全反対称テンソル \epsilon_{ijkl}も座標によらないのですが、こいつがテンソル的な変換則を持つのは変換が回転の時だけです。(座標軸の反転に対してはテンソル的に振る舞いません。)これは偽テンソルなどと呼ばれます。微分形式で言う2形式と3形式みたいなもんですたぶん。

完全反対称テンソル同士の積は単位テンソルで展開できます。また、偽テンソル同士の積はテンソル的に振る舞います。

微分演算子\frac{\partial}{\partial x^i}なんかは共変ベクトル的に振る舞います。これを使うとなんか微小要素とか積分とかガウスの定理が定義できます。省略!

 

§7四元速度

位置(これは反変ベクトルです)をスカラーである微小世界間隔でわると、当然反変ベクトルが得られます。

v^i=\frac{dx^i}{ds}

これを四元速度などと言います。四元速度は無次元量で、ノルムは1になります。つまり、四元速度ベクトルは世界線に接する単位ベクトルですね。

四元速度を更に微小世界間隔で割ることで、四元加速度が得られます。

a^i=\frac{dv^i}{ds}

四元加速度は常に四元速度と直交します。